愛想人〜アイオモイビト・先生〜
「今のオレにとって夢野はもう過去のヒトなの。 今のオレには…もう決まったヤツがいるんだよ」
サラっと言ってのけた遥都さん。
それほど…その彼女を愛してるんだね?
でも…それならなんで?
なんであたしを今でも抱いて…そして抱こうとするの?
あたしは涙が溢れないように歯を食いしばった。
そうでもしなきゃ…あたしはきっと大声で子供のように泣きじゃくっていたと思うから。
「そう。 それほど彼女を愛してるの…。 でも生徒なんだから障害は多いと思うわよ?」
悲しみを浮かべた瞳でそう言った夢野先生。
生徒…?
じゃあ先生はその生徒を思い浮かべながらあたしを代わりに抱いてたってこと?
いくらなんでも…ひど過ぎる。
「それくらい、分かってるよ」
真剣な声と表情でそう言ってのけた遥都さん。
それを見てあたしは『もう入る隙はないんだ』って感じた。
「お幸せに…」
それだけを言い残して理科準備室を後にした夢野先生。
夢野先生…あなたはとても強いですね。
最後に見た夢野先生の顔は最高の笑顔だった………。