愛想人〜アイオモイビト・先生〜

サヨナラの時間


遥都さんがそんなに強い想いを寄せているのならあたしが入れる隙間なんて微塵(みじん)もないだろう。


だったら…サヨナラしなきゃだよね?


今日呼び出したのもそれを伝えるためなのかな…。


考えたくないがそんな考えばかりが浮かんでくる。


夢野先生が出て行ったので二人っきりの空間。


これから言われる言葉が聞きたくなくて逃げ出したくなる。




「あの…な…」


非常に気まずそうに切り出した遥都さん。


あたしにはまだサヨナラを言える準備が出来ていないので遥都さんの言葉に自分の声を被せた。


「すみません。 あたし、これから用事があるんで帰らせていただきます。 話はまたの機会に」


それだけを言って、あたしを呼び止める遥都さんの声も無視して理科準備室を後にした。




ねぇ、遥都さん?


あたしが笑顔でサヨナラを言えるまで肌を重ねることがなくても…遥都さんの気持ちは言わないで下さい。


それが………遥都さんと別れるまでの最後の我が儘です。


だから、あたしにもう少しだけ時間を下さい………。





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