青いリスト
電車は無人駅に到着した
仕事場まで後二駅だ。
この無人駅には誰も乗り降りしない。
拓也だけではなく、周りの乗客もこの無人駅に電車が立ち寄る必要性に疑問を感じていた。
早朝の気忙しいさなか、少しでも時間の余裕も欲しいぐらいなのに、この無人駅に停車する事で約一分のロスをする事に拓也は少し苛立ちを覚えていた。
だが、一分経っても電車は発車しない…
田舎の電車が遅れる事は日常茶飯事で、乗客の中からは[またか]という深い溜息がこぼれる。
二分…三分…
電車はまだ発車しない。
周りの乗客も手に持っていた携帯や本を閉じ辺りをキョロキョロし始めた。その刹那、アナウンスが流れた。
[お客様の中で…お医者様か看護士の方はいらっしゃっいますか…繰り返しますお客様の中で…]
それを聞いて周りがざわついた。
どうやら急病人でも出たらしい…
拓也は他人事のように繰り返されるアナウンスを聞いていた。
周りの乗客は二両編成の後ろの車両を覗き込んでいた。
[野次馬め…だから人間なんか嫌いなんだ]
拓也は心の中で呟きながら窓の外を見た。
周りは数える程でしか建物はなく、病院等は見当たらない。となると…
救急車が到着するまではかなりの時間が必要となる。
ここは山と山の間にあるあまりにも小さい村だ。
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