青いリスト
[また来てるわよあの子]
[ここの所、毎日じゃない?]
[昨日はもう閉店ですって言ったのに、常連だからいいでしょだって]
[という事は5時間も居てるの?女一人で?信じられない]
紀子は職場からの帰り道にある、若者向きの居酒屋で飲んでいた。
確かに店員が言う通り、これで10日連続立ち寄っている。
6時ぐらいから飲み始め、閉店の11時頃まで、ずっと一人で飲んでいた。
食事を取らずに、飲み放題メニューのみ注文するのは店側にとって、決して良い客ではない。
だが、それだけで反感を買っている訳ではない。
紀子はオーダー以外に何度も店員を呼び出し、先程まで話していた続きを一方的にする。
それは酔っていての行動ではなく、客として来ているから当然という面持ちで、店員が去ろうとすると袖を掴んで話しを続ける。
[またすぐに来ますね]
店員の明らかに迷惑だと言わんばかりの表情の裏が紀子には分からない。
[私に笑顔で接してくれている]そう受け止めるまでに留まる。
紀子は話し相手が欲しかった。
だが、ここでも職場と一緒で、紀子は注目の的であり、極めて迷惑な存在であった。
紀子は店員に酒を一緒に飲むよう強制した。
たまりかねた店員が店長を連れやってきた。
[いつもありがとうございます…あの…この子は只今勤務中ですのでお酒の方はちょっと…申し訳ございません]
[どうして?前飲んでくれたよ?じゃぁ前何で飲んだのよ?]
[えっとそれは…]
[いいじゃないお酒くらい、私いつもここに来ているよ]
[はい…いつもありがとうございます]
[じゃぁ店長さん一緒に飲んでよ]
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