ブルー・フィールド
「酒は冗談としても、何か買って行くぐらいはしろよ」
おお? 兄北田からまともな意見が出るとは。帰り道は豪雨か?
「いいよ、家ならお菓子とか売るぐらいあるから」
売るぐらい?
「うん、家のお父さん、製菓工場に勤めているから、失敗作とかだけど沢山あるんだ」
「成る程ね。だから子供も失敗作って……」
「言うと思ったよ! でも関係無いから!」
チッ! 村山に見抜かれるとは、まだまだ芸人として未熟だな。
帰り道、当然の事ながら瀬戸先輩は途中まで一緒な訳だが、なぜか妹北田も着いてきている。
「だって、私も勉強しないと、ね?」
という理由らしいが、ナミの目がベリーになるかのごとく、目にお菓子が浮いている。
勉強が目的じゃないのは一目瞭然だな。
駅から20分くらい歩くと、村山邸が見えてきた。
……ん?
「村山のお父さんは工場勤務だったよな?」
「うん、工場に勤めているから、家は普通の家だよ」
「成る程、で、これは?」
そう言って俺が指差す先には……これを普通というのか?
木造であろう2階建て、これは確かに普通だ。
車が2台置けるスペースの駐車場、これも普通だ。
アイフル犬が所狭しと遊びまわれる程度の芝の庭、ちょっと土地のある一戸建てなら普通だ。
「なんで屋根に金の鯱がのっているんだ?」
「え? 普通でしょ?」
「どんな名古屋県民だよ!」
「名古屋は県じゃなくて市だよ?」
「そうですね。愛知県名古屋市ですよね。じゃなくて!」
実は村山の家も相当な金持ちか?
「浅野君、行こ」
寺尾に促されて、門をくぐる。
「村山の部屋はやっぱり2階か?」
「うん。見晴らしは良くないけどね」
「地下2階から見晴らしが良いわけ無いだろ?」
見えるとしたらモグラと蟻の巣ぐらいだ。
「何で地下なの? 2階って言ったら地上でしょ」
寺尾さん?軽いボケですけど……。
「いいから早く入る!」
あーちゃん、恐すぎ。