ブルー・フィールド
そんなやり取りの間に3人が戻ってきてしまった。
仕方ない、明日再挑戦だな。
「浅野君、部屋漁ってないよね?」
「安心しろ、今日は出来なかったから、明日再挑戦するつもりだ」
「なんの安心? そんな宣言されたら、明日は部屋貸さないから」
「はいはい。バカはいいから、はい、お茶よ」
もう、ね、あーちゃんに軽くあしらわれるのは慣れるしか無いって言うか。
村山の持っているお盆から、あーちゃんが皆にお茶を配る。
喋らず、こういった女の子らしい面を見せていれば、まあまあ可愛いのに。
「浅野君、何か変な事考えてる?」
……あーちゃんはホント、こういう事には、感が冴えるんですね。
「これ、村山君のお父さんが勤めてる工場のお菓子なんだって」
これが例の失敗作、というやつか。
ん? 失敗作?
「どういうタイプの失敗作なんだ?」
乾燥剤の入れ忘れとかならまだしも、餃子の中にダンボールを混ぜるような失敗作は食べれないぞ。
「そんな中華料理は作ってないから! 普通にパッケージの印刷ミスとかだよ」
ほうほう、そういう失敗ならいいか。
何々……『小指の味』?
「これは893さんの味か?」
「これは『小枝』の間違いだね」
「どうしたらこんな間違いが起きるんだ?」
漢字にすれば一字違いだが、タイプミスする違いじゃないぞ?
「多分、お菓子の形が小指に似てたんじゃないかな?」
余計恐いわ!
このまま休憩だけで時間が過ぎないか、と思っていたが
「由美と浅野君、付いてきてる?」
「バカだからわかんないもん」
「ん? 俺はまあ自分なりには、分かっているつもりだが」
2人の返事を聞いたあーちゃんが、深い溜め息を吐く。
「あのねえ。せっかくの勉強会なんだから、解からない所があったら聞いてよ」
「そうは言うが、どこが解からないか解からないから、聞きようが無いんだが」
うん、正論。