ブルー・フィールド
正論のはず……なんだけど……皆の視線が……。
「よくそれで受験受かったね」
村山の分際で見下しやがる……くやしいが勉強では敵わない、か。
「美樹ちゃんの方が勉強できるんじゃない?」
はて? 美樹ちゃん? 誰?
「ちょっと! 私! 北田美樹!」
ああ、妹北田としか書いて無いから名前をすっかり忘れていた。
「ほら教科書にも『妹北田』……あれ?」
「ほれ、自分でも『妹北田』って書いてるじゃないか。その認識が正しいんだ」
「まったく。あんた達と一緒だと、真面目に勉強してるのがバカに思えてくるわね」
今日のあーちゃんは溜め息の数が多い。
そういえば溜め息の数だけ幸せが逃げるというが、あーちゃんは今日で人生の大半の幸せを逃がしただろう。
「そんな迷信、信じてませんから」
あ、そうっすか。ってか逃げる幸せを魚網でひっ捕まえそうだが。
「それより、英語は? 浅野君も苦手でしょ」
「も? と言う事は?」
ちらっと寺尾を見ると、片肘を突いたまま天井を見上げている。
「……へ? あ、私?」
話の流れからすればあなたしかいないですよ>寺尾さん。
「英語はよく聞いているから、多少は自信があるぞ」
俺の日本語が変なのか、あーちゃんは反応に困っている。
「英語をよく聞くって? 洋楽とか?」
「いやいや。古くはファミリーコンピューターから始まり、PCエンジン、スーパーファミコン……他にもドラゴンクエストやファイナルファンタジー。テトリスにギレンの野望、おっと日本語が混じっているか」
「なにそれ? 全部ゲームじゃない。それにテトリスはロシア語でしょ!」
え? そうなの? カタカナ表記は全部英語だと思ってた。
「これじゃ先が思いやられるわね」
「岬さん、仕方ないよ。僕が浅野君に教えてあげるからさ」
くっ! 村山のくせに……上から目線が気に食わないが、ここは自重するしかあるまい。
「わかったわ。じゃあ由美と美樹ちゃんには私が教えてあげるから」
こうして英語のレッスンが始まったが、内容を省略するのは、たぶん作者も英語が苦手なんだろう。