ブルー・フィールド
 
 そんなこんなで勉強を再開。

 やがて時計の針が8時を指し、あーちゃんが筆を降ろした。

「今日はこれくらいにしましょ」

 あーちゃんの指令が出たので、皆ホッとしながら背伸びをしたり、首をコキコキならしたりする。

「後半はあまりはかどらなかったね」

 妹北田は、前半はかどっていたのだろうか?

「でもこれだけちゃんと覚えておけば、赤点は免れるはずだから」

 さすがあーちゃん、試験範囲もバッチリ把握ですね。

 さてと、あまり遅くならない内に、帰路に着きますか。

「ねえ、浅野君。どうやって帰るの?」

 寺尾さん、脇腹の肉をつつかないでください。結構気にしてるんだから。

 どれだけ鍛えてもなかなか落ちないんだよね、脇腹は。

「寺尾とあーちゃんは俺が送るからいいとして、妹は?」

「妹って略し過ぎ! 私はお兄ちゃんが駅まで迎えに来てくれるから、大丈夫だよ」

 なんとも仲の良い兄妹で。

「じゃあ下まで送るよ」

「なあ、村山。そこは駅まで送るのが日本男児の心意気、というものじゃないのか?」

「あの……そうなんだけど……」

「夜道が怖い訳でもあるまい?」

 軽い冗談のはずが……

「最近、変質者が出るらしくて……」

「男を襲うか!」


 村山家を後に、女の子3人を引き連れて駅まで歩く。

 傍から見れば、女子高生3人に囲まれたプチハーレムなんだろうが、いかんせんメンツがメンツ。

 井戸端おばちゃん2人に釣られて、寺尾もそっちの世界の住人になってるし。

「そういえば5組の早川さん、2年の矢坂先輩にコクったらしいよ」

 などと、恋愛話に盛り上がっている。

「ねえ。浅野君はそういう話し、聞いてない?」

 俺を話しに誘いたいのか、単に他の情報が欲しいのか、寺尾が聞いてくる。

 多分、後者だろうが。

「ん〜、そんなに聞いてないが、まあ無いこともない」

 高校一年生、色恋話には事欠かない。

 クラスの中にも成立したカップルも何組かいるし、他のクラスや上級生と付き合い始めたのもいるし。
 
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