ブルー・フィールド
「だが、俺が一番気になるのは、北田先輩と瀬戸先輩の関係なんだがな」
単なる部活仲間以上の親密さを感じさせる二人の関係。
それだけだったらまだいいが、そこに村山の存在も加わっているし。
たまたま妹北田もいるし、この際だ、と口に出してみた。
「え? お兄ちゃんと瀬戸先輩? 何の事?」
文字にすればすっとぼけているが、口調は確実に焦りを含んでいる。
そういった面に鋭いあーちゃんも気付いたみたいだ。
寺尾は相変わらずで、そもそも二人の関係に何も感じていないんだろうが。
二人の視線に気付いた妹北田は
「うーん、これ、言っちゃっていいのかなあ?」
と言いつつ、喋りたいようだ。
妹北田には内緒話をしても、こうやってばらされる、ってことだな。今後注意しよう。
「あのね、二人は……」
わざわざ小声で語り出すが、歩きながらだから小声になられると聞き取りにくい。
3人が妹北田に近寄り、自然と足も止まる。
「お兄ちゃんがコクったけど、フラれたんだよね〜」
「えー! そうだったの?」
「うん。去年の今頃だったかな? かなり落ち込んでて、慰めるのが大変だったんだから」
成る程。兄北田の好意を知っているから、瀬戸先輩もそれに合わせる形で、仲が良いのか。
「高校に入る時、この事は誰にも言うなって言われたけどね」
そう言われながら3人に同時にばらしてる妹北田。
しかし本人にはばらしてる自覚が無いのだろう、飄々と、いや、むしろ他人の恋愛話にワクワクしているようにも見える。
困った井戸端おばちゃんず、だな。
「ならば、それはそれとして話は終わろう。とりあえず足を進めないと、もうかなり時間も遅いしな」
3人を促し駅までの道程を急がせた。
「そうだね。明日も練習あるし、早く帰って身体を休めなきゃね」
「あーちゃん、まるでマネージャーみたいな発言だな」
「みたいじゃない! ホントのマネージャー!」