ブルー・フィールド
 
 帰りの電車、あーちゃんは

「私は美樹ちゃんと話があるから」

と妹北田と2人掛けに座った。

「何だろね? ま、いっか。座ろ」

と寺尾に促されて、2人掛けに横並びに座る。

「そういえば、2人で座るの久しぶりだね」

 俺と寺尾が揃う場所には、あーちゃんは必ずいたからな。

「ねえねえ。明日もモーニングコールしてあげよっか?」

 寺尾はRomanticが止まらない様子で話してきた。

「それはありがたいが……なんか遠足前日の小学生みたいにはしゃいでないか?」

「なんで小学生なのよ〜。けど、ワクワクしてるのはしてるよ」

 なるほど、CCBではなく、ミポリンでしたか。

「だって、大会だよ? 興奮しない?」

「そうか? 俺はまた大会かあ、ってちょっと憂鬱だがな」

 大会が普段の練習の成果を披露する場であるのは分かるが、それに対して異常な程、結果を求められた中学時代。

 大河原の様にタイムを求めて水泳をしている奴らには、それが当たり前なんだろう。

 しかし俺の様に趣味程度で泳ぐ奴には、タイムはグリコのオマケと大差ない。

「そうなの? 私はSSであんまり大会出れなかったからなぁ」

 そっか、SSだけで泳いでいた寺尾は、学校単位で参加する大会には、出ていないか。

「じゃあ大会自体あまり出てないのか?」

 俺自身はSSには行った事もない為、噂話程度しか知識がない。

「一応年に何回かはあるけど、出場枠が少なかったから……」

 SS内で普通より少し速いクラスにいた寺尾には、あまり出場機会が巡ってこなかった、という事だろう。

「でも、高校生になって、こうやって大会に出れる様になってよかった」

 そういえば……そうだよな。

「俺も初めて大会にエントリーしてもらった時は、超ワンピースタイリングでハンコックを2個買ったら、ノーマルとレアが1個ずつ出た時並に嬉しかったしな。」

「ダメだよ! お金で買える物で例えちゃ! 想い出はプライスレスなんだから!」
 
< 155 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop