ブルー・フィールド
 
「ところで今更なんだが、なんであーちゃんはマネージャーなんだ?」

 今まで、なぜマネージャーになったのかを聞いていなかった。

「たしかに今更よねえ」

 あーちゃんが呆れた視線をプレゼントしてくれた。ありがとう。

 でも、お返しはしない。

「私は、中学の時にマネージャーやってたから、今もマネージャーなだけよ」

「いや。なんで中学からマネージャーをやっているかを尋ねてみたんだが」

 わざわざ主旨をずらした様な答え、言いにくい事でもあったか?

「それは……あれよ、あれ!」

 あ、困った時のあれ理論を使い始めた。

「言いにくい、と言う事は、多分、男関係だな?」

 俺の推理にあーちゃんの顔が一気に赤らむ。

「え? そうなの?」

 寺尾も知らないのか。

「そんな事、どーでもいいでしょ」

 怒鳴る声にも迫力がない。しかも無駄に乙女チックなトーンだし。

「無駄って言うな!」

 あ、これはいつものおばちゃんトーンだ。

「成る程、謎はすべて解けた!」

「わ〜浅野君、コナン君みたい!」

「いや、これはコナン君ではなく金田一君のつもりなんだが」

 寺尾的には探偵=コナンなんだろうが、生憎俺は灰原さんよりも深雪ちゃんの方が好きだ。

「よくあるパターンで、好きな人が水泳部にいたから、マネージャーで入部して近付こう、みたいな?」

 もちろん語尾はザキヤマ風にしてイラッとさせる。

「あ! あーちゃんの好きな人って五島先輩だっけ?」

「寺尾は知っているのか?」

「ちょっとだけ。中央中では結構有名な先輩だったよ」

「ちょっと由美。余計な事言わないでよー」

「え〜、だってホントの事だし」

「だったら由美だって熊沢先輩カッコイイ! とか言ってたでしょ」

 何? まあ昔話だし、嫉妬はしないが。

「今言わなくてもいいじゃないよ!」

 寺尾の怒り方がハンパない。そんなに嫌なのかね?

「なによ! ホントの事じゃないのよ!」

 あらあら、あーちゃんまで、かなり怒りモードだよ。

 女の子同士の、過去話に耳を傾けるのは野暮だし、世界の車窓でもしますか。
 
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