ブルー・フィールド
「けど、市立商業は市大会まで出なくてもいいのにな」
市大会は公式記録こそ残るものの、上位大会があるわけでもない。
「でもあそこは、市大会ではメンバー落としてくるからな」
兄北田からの豆知識だ。
「へえ。強豪校はやること違いますね」
「ああ、まあ新一年は無いにしろ、来年のレギュラー候補に場慣れさせたいからだろう」
ハハハ、市大会で入賞(しかも6位)を目指す者には、有り難いようなムカつくような。
「あそことやり合うのはバカバカしいからな。気にするな」
一年間の経験の差か、兄北田の言葉に何となく貫禄……というか開き直りだが……を感じる。
陣地を構築し終え、マネージャー連合軍に見張りを頼んで更衣室へ。
中学生と高校生が混ざり、更衣室はかなり賑やか、ってか五月蝿い。
特に高校の新一年生が、後輩になる中学二、三年生を見かけると、懐かしさからか声を掛け、大声で盛り上がってしまう。
「浅野、君も?」
隣で着替えていれ高橋が尋ねてきた。
「ああ、後輩はいるにはいるが、野郎は覚えてない!」
と口にはするが、実際はまあ何人かは知っている。
いろいろな事情で、後輩全員と仲が良い訳ではないのが、悲しいといえば悲しい。
「あ、浅野先輩だ」
と当然ながら、声を掛けられる。
「ああ、島崎か。久しぶりだな」
島崎は現・北中水泳部の部長、のはず。
「はずってなんですか、自分達で指名しておいて。ちゃんと部長やってますよ」
おっと、これは失礼。
「先輩ってたしか、羽鳥高校でしたよね?」
「そうだが、確認するという事は、忘れていたという事か?」
野郎に覚えていてもらいたいものでもないが。
「当たり前ですよ。男の先輩の進路なんて、いちいち覚えてません!」
……誰だよ、こいつの教育したの。
あ、俺か。