ブルー・フィールド
 
 さて、アンカーの兄北田。

 このクラスなら十分に速いタイムを出している方なんだが、生憎引き継いだ時点で4位争いとのタイム差は約3秒ほど。

 このクラスのアンカーなら100mを1分00〜05秒くらいか。1分を切る選手はいないだろう。

 逆に遅い選手でも1分5秒を越えるアンカーは少ない。

 リレーメンバーが組める程の学校なら、そのレベルの選手が所属している、という傾向がある。

 それでも兄北田は猛追を見せる。

 普段のいい加減さはどこへやら、やはり泳ぐ時はきっちり泳ぐ。

 後続になる3コースは25m付近では、最早相手にしていないかのように置き去りにしている。

「ん? 6コースはあんまペース上がらんみたいやんな?」

「そうみたいですね。1コースは先輩と同じくらい、ですかね?」

 先を見ると、6コースは兄北田に追いつかれ始めているだけでなく、4位争いをしていた1コースとも差が開いている。

 その前の7コースと1コースの差をみると、こちらも差が縮まっているようだ。

 その1コースと兄北田は同じくらいのペースか。

 このままでいけば、5位にはなるだろうが、その後はどうか、といったところだが。

 50mターンに差し掛かる時には、兄北田は6コースより早くターンに入った。

「先輩すごいよ。もう5位になっちゃった」

 隣で村山は興奮しているが、そんなに騒ぐほどの事でもないのだろう、井上先輩は飄々と見ている。

 ターン後、先ほどまでぐいぐい泳いでいた1コースが、徐々にペースダウンしたか?

 そういえば隣にいる他の1コースメンバーは、心配そうな顔をしている。

 チラッと京本バリに流し目をしてみると、なにやら諦めムードっぽい。

「もしかしたら1コースはオーバーペース過ぎたかもしれないな」

「え? よく。そんな事分かるねすごい」

 いや、雰囲気からそう思っただけで、その他の根拠はないんだがな。
 
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