ブルー・フィールド
と、もう一人。大塚の姿もある。
「ちょっとだけだけど、大塚さんも同席していいかしら?」
先輩が何故大塚を連れて来たか、言われなくても、理由は分かる。
先程、俺を怒らせた事、すなわち寺尾に対しての言葉を気にしているんだろうな。
「俺は別に構わないですけど」
冷たく言い放つでもなく、無関心に言うでもない。
いつも通りの口調で了承する。
「寺尾も構わないだろ?」
俺の問い掛けに、頷いて答える寺尾。
寺尾自体は、やはりきつく言われたのが気になっているのかもしれないが、それならば、仲直りするチャンスだし。
「やっぱりね。大丈夫よ、大塚さん。じゃあ行きましょうか」
藤岡先輩が先頭に立ち、大塚がその横を歩く。
少し下がって、俺と寺尾が並んで着いていく。
しばらく行くと、ビジネス街の狭間か、昔ながらの個人商店が並ぶ通りに入った。
「ここよ。いい雰囲気でしょ」
先輩はそう言って店内に入って行く。
店はアンティーク調に仕上げたのか、木目の壁に、窓のサッシも木を使っている。
入口の上には、丸太を縦切りした看板があり
『コーヒーショップ ラーク』
と太い字で書かれている。
「じゃあ入ろうか」
寺尾を促すと、またコクンと頷くだけ。
やれやれ、と寺尾の先に立ち店内に入った。
「いらっしゃいませー」
店内からは可愛いウエイトレスさんの声が聞こえた。
先輩は窓際の席に座り、大塚がその横に座る。
先輩の向かいに寺尾が座り、俺は寺尾の横の席に腰を下ろした。
店内は落ち着いた感じで、内装にも凝っているんだろう。
内壁は外壁と同じように木製で、至る所に、造花であろうが、花やツタをあしらってある。
「何か大人な感じの良い雰囲気ですね」
俺が行く喫茶店といえば、近所のおばちゃんがやっているありふれた喫茶店かマンガ喫茶程度だ。