ブルー・フィールド
 
「2人は何にする? ちなみにこのお店の、オリジナルブレンドは美味しいわよ」

 話しを始める前に、ドリンクを頼むのは、喫茶店なら当たり前か。

「俺はそれで構わないですけど……」

 寺尾をちらっと見ると

「あ、あの。私、コーヒーは飲めなくて……」

 コーヒーが飲めないからお子ちゃまだとかは言わないが、まああれだ。

 大人の女性ならまだしも、コーヒー通を気取る女子高生よりは可愛いと思う。

「寺尾さんらしいわね。それじゃあ……紅茶は大丈夫? ここのダージリンティーも美味しいわよ」

 なんかこうやってオススメをできる女性ってのもいいよな。

「浅野君?」

 俺の心境を読み取ったのか? 寺尾がちょっと不機嫌な顔をしている。

「ん? 先輩のオススメだし、いいんじゃないか?」

 あくまでも悟られないように普通に答える。

「……そうだね。じゃあそれにします」

「大塚さんは、いつもと同じでよかったわね?」

 大塚はいつも来ているのか。

「あ、はい」

 いつものハイテンションはどこへやら、しおらしくなっている。


 しばらくして、注文したドリンクが運ばれてくる。

 それぞれがドリンクを手に取り、一口飲んだところで先輩が口を開いた。

「浅野君、変わらないわね」

 いきなりそこへきますか?

「そうですか? というか、あまり先輩と会話した記憶が無いんですけど」

 と、先輩はやれやれ、といった感じのため息をついた。

「浅野君、成績良くないでしょ?」

 何故にそこ?

「物覚え悪いみたいだし」

 え〜と。遠回しにバカにされてます?

「寺尾さんにも聞いたけど、私の事、あまり覚えてないみたいだしね」

「いや、でも先輩と何か特別に話した事もないですし」

 半年程度とは言え、同じ水泳部にいたから、挨拶や部の連絡程度の会話はしただろう。

 しかし、泳ぎを教えてもらったり、寺尾の様に相談したりはしていなかったはず。
 
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