ブルー・フィールド
 
「それはまあいいとして」

 え? 落とすだけ落として放置ですか?

「さっき話した、去年の市大会の時、浅野君と大河原君が言い合いしてたの見たのよ」

 ……大河原はいつまで俺の人生に絡むつもりだ?

 本人には自覚は当然無いだろうが。

「ん〜あいつとはしょっちゅうやり合ってたんで」

 市大会の時に何で言い合いをしたか、なんて覚えていられない。

「あの日、大塚さんは調子が悪くて、前日の100mは優勝したけど、200mは3位だったのよね」

 調子が悪くて3位とか言われても、絶好調でも決勝に残らない俺はどうなんだ?

「それを大河原君は責めてたんだけど、浅野君が大塚さんの事を庇っていたわよね。順位やタイムだけが水泳じゃないって」

 ん〜そう言われてもなあ。

 俺と大河原の言い争いは、結局いつもそこにたどり着くからなあ。

 その日も、大塚だから庇った訳じゃなく、誰だろうと大河原に責められていれば庇っていただろう。

「その後かな。大塚さんと桜坂の話をしてた時に、浅野君の話をいろいろ聞いたわよ」

「そんな個人情報を収集して、どうするつもりだったんですか?」

 桜坂が共学ならまだしも、女子校なんだから、俺には関係無いはず。

「それはまた後で。で、浅野君は、部活を、水泳を楽しめればいい、って方針なんでしょ」

 何が後なんだか分からんが、まあ結論はそうだから、軽く頷く。

「だから、さっきはあんなに怒鳴ったのよね」

 先輩の言う通りだが。

「大塚も、そうだと思ってましたし」

 でなければ、必要以上に寄り付く大塚の好きにやらせたりしない。

「大塚さんもそうに決まってるじゃない。だって、そうじゃなきゃ浅野君に近付いたりしないわよ」

 何か微妙な評価だな。それ以外は取り柄が無いみたいじゃないか。

 まあ無いけど。

「で、後は大塚さん。自分から言うのよね」

 先輩に振られ、しょげていた大塚が俺を……いや、そのまま視線は寺尾にスライドしていく。
 
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