ブルー・フィールド
 
「寺尾さんだけじゃなくて、浅川さんや岡本さんも、なかなかできなかったのよね」

 浅川? 岡本?

「覚えてないかしら? 浅野君だし」

 先輩、ちょっと俺を小馬鹿にしすぎでしょ。

 言われた通り、覚えてないけどさ。

「ほら、浅川さんがちーちゃんで、岡本さんはれいちゃんだよ」

 ああ、藤岡先輩のファンクラブを作っていたというメンバーか。

「小西君って部長、覚えてる? 彼が何回もダメ出ししてたけど、3人とも、なかなか大きな声がでなかったのよね」

 小西部長か、あの部長は腹の立つ奴だった。

「その時に浅野君が助けてあげた、のは覚えてないかな?」

 は? 俺?

「俺が何かしました?」

 俺の問いに呆気にとられる二人。

「まったく。小西君に向かって『女の子に無理させるな』って怒鳴ってたでしょ」

 ん? そう言われればそんな事した、かな?

 大河原同様、小西部長ともしょっちゅうぶつかっていたから、記憶が混在している。

「それで、殴り合いになる寸前を止めてくれたのが、藤岡先輩だったんだよ」

 そう言われて、よく考える。

「ああ! そういえばそんな事もありましたね。うん、思い出しました」

 我ながら気付くのが遅いのは理解している。

「その後も、練習中にはいつも小西君と言い合いしてたわよね」

 それも仕方ない。

 強豪校だから、スパルタ方式にしたいのは分かるが、選んで進学した高校ならまだしも、学区で振り分けられただけの中学。

 俺達初心者は、単に水泳部で泳げれば良いから入部しただけで、大会入賞やらタイムやらは、あくまでもオマケ、ついででしかない。

 それでも小西部長は、大河原並の成果や結果を、初心者にまで求めていたからな。

 俺はある程度の練習には着いていったが、中には当然脱落する初心者もいた。

「浅野君は初心者なのに、寺尾さん達初心者を必死で庇ったり、勇気付けたりしてたわよね」

 そう言われればそうですが。

 何か話の先が見えないのは俺だけか?
 
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