ブルー・フィールド
「小西君、いつも愚痴ってたわよ。あの生意気な新入生、何とかできないかって」
そりゃそうだ。部長としては、新入生にでかい態度を許していたら、他の部員に示しがつかない。
「結局、浅川さんと岡本さんは、私達が引退した後に退部したのよね」
三年生の引退は夏休み終了と同時。
それまでは皆残っていたが、三年生の引退ど同時に一年生が、20人近く退部した。
何かあったのか、と校内で噂されたんだが。
「藤岡先輩が防波堤になっててくれたんですよね」
「そうなのか?」
「浅野君、気付いてなかったの?」
高校生ならまだしも、中学一年生でそれに気付いていた寺尾の方がすごいと思う。
「寺尾さんとは、その後もいろいろ話はしてたけどね」
引退したから知らない、ではなく、引退しても後輩の世話をする、とか、何て優しい先輩なんだろ。
「ところで、浅野君は寺尾さんを覚えていなかったの?」
はい? 何か急な話しの転換じゃないですか?
「ん〜と、実際の話、小西部長や大河原とやり合いの毎日しかあまり記憶に無いというか」
2人が白眼の如く白い視線をプレゼントしてくれるが、こんなプレゼントは嬉しくない。
「だってしょうがないでしょ。俺の主張を通すには、それなりに速さや結果を出さなきゃいけなかったですし。だから必死で練習してたから」
もちろん、恵まれた体格のお陰もある。
「浅野君はそういうとこ、真面目だよね。勉強は不真面目だけど」
だから寺尾さん、余分な事言わなくてもいいから。
「やっぱりそうね。私の聞いていた通りだったわ」
「先輩が聞いていたって、何が?」
「大塚さんに聞いた、浅野君の印象。大河原君と対立しながら、初心者を優しく指導していたって」
傍から見ればそうなんだ。別に初心者だから、と庇うつもりは無い。
水泳が好きな奴らと、楽しく泳ぎたいだけなんだけど。