ブルー・フィールド
と、そこに
「あれ? 板橋?」
島崎の声が聞こえた。
「あ? 島崎? なんだよ」
……チンピラかよ。
「お前ら、相変わらず仲悪いんだな」
この二人は何かというといがみ合う。
よくある話で、同じ女を好きになって以来、いがみ合うようになっただけだが。
その子の名前は小林菊美。昨日バッタですれ違った子だ。
だが実は、小林は陸上部の男に惚れている、っていう大塚情報を俺は知っている。
当然、2人の純情を見届けたいので、黙っているが。
決して言った後に落ち込むのを慰めるのが面倒、とかいう訳ではない。
「なんで板橋がここにいるんだよ」
「俺が弘樹さんのとこにいるんは普通の事だろ?」
だから。口調がチンピラなんだから、やめなさい。
「浅野先輩は北中の先輩なんだよ。お前は寄り付くな」
可愛い女の子ならまだしも、野郎の後輩に取り合いされるのは気持ち悪い。
といっても、こいつらは俺がどうこうじゃなく、単に俺をいがみ合いのネタにしているだけだ。
「お前ら、ホント頼むから静かにしてくれ。ここでいがみ合ったからって、小林はお前らのものにはならないんだし」
小林の名前を出すと、何となく静かになる。
「まあ、弘樹さんには世話になったばっかだし、とりあえずここは引いときます。それじゃ」
板橋はそう言って島崎を一睨みすると、南中の生徒が着替えている方へと歩いていった。
「なんです? あいつ」
意味の分からない島崎が聞いてくるが、説明は面倒だな。
「ああ、大した事じゃない。気にするな」
そうして島崎と適当に喋りながら着替えを終える。
着替えを終えたフリー選手はそのままサブプールへアップをしに行き、
俺は朝倉先輩達と一緒に陣地へ戻った。