ブルー・フィールド
 
 陣地に着くと、先生を始め、皆が褒めてくれるが。

「何かおかしくないですか?」

「何がおかしいんだ?」

 兄北田が、5コースの選手とは比べものにならない怪しさ100%のスマイルで聞いてくる。

「俺が16分台は有り得ませんし」

 それを聞いたあーちゃんが、ニタニタしている。

「練習の時はねえ、先生の指示で、タイムを遅く言ってたからね」

 ……何と言った?

「浅野君を調子に乗らせるなってね」

「つまり、遅いタイムを言っておいて、さらに頑張らせよう、と?」

「すっごーい。浅野君にしては理解力あるじゃん」

 何だか無茶苦茶バカにされてるのは、気のせいじゃないよな?

「ちなみに、練習の時のベストは17分17秒だから、今日のタイムはベストだよ」

 あーちゃんは言い終わると下品な笑顔を浮かべ、兄北田や先生も、してやったり、の笑顔を浮かべる。

「何だか素直に喜べないんだが、このモヤモヤした感情をどう処理すればいいんだ?」

 隣にいた由美に聞いてみたが。

「分かんないけど、素直に喜べばいいんじゃないかな?」

 いいよな、由美は皆に可愛がられてるから、こんな引っ掛けみたいな事されないし。


 プールでは1500mの2組目がレースを行っている。

 レースも後半、というより終盤か、1000mを越えている。

「この内の一人に勝てれば入賞だね」

 由美がワクワクしながら言っているが。

「それはそれで構わないが、何か決勝レース無しで入賞というのも変な感じだな」

 今までは全て予選・決勝の流れの中で、決勝進出を勝ち取り、入賞をもぎ取る展開だった。

 フリーでやっていたのもあり、一発決勝すら経験がないから、イマイチ実感が湧かないが。

「そうなの? でも入賞は入賞だよ。入賞出来るといいね」

 何か由美の単純に喜べるところとか見てると、いろいろ考えている自分がバカバカしくなるな。

「あ〜今単純だってバカにしたでしょ!」

 いや、逆に褒めてるんだがな。

 単純なら単純に褒め言葉として受け取りなさい。
 
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