ブルー・フィールド
 
 あーちゃんは早くも瀬戸先輩の隣に座り、皆にビールを持つように指示を出している。

 多分仕切り屋が好きなんろう。決して早くビールを飲みたい訳じゃ無いと思いたい。

「はい、皆持った? 乾杯するよ」

 見ると先程までのスポーツマンスマイルはどこへやら、兄北田を始め、皆缶ビールを持っている。

 あれ? 俺の手にもいつの間にかあるぞ?

「かんぱ〜い!」

 瀬戸先輩に合わせて皆乾杯をするが……あれ? 俺の缶、もう空なんですけど?

「わ〜、浅野君、飲むの早いね」

 妹北田が驚いているが。

「小さい頃からじいちゃんに鍛えられたからな」

 俺の記憶にある一番小さい頃の思い出は、ひい祖母ちゃんの通夜で、じいちゃんのとこに近寄ったら熱燗を勧められて飲み干した事だからな。

「じゃあもう一本行こう!」

 まだ知り合ったばかりだというのに、そのハイテンションはどうよ?

 合コンで盛り上げ役で終わるタイプにはならないようにね。
 

「ところでここって瀬戸先輩の家なんですか?」

 3本目に入った瀬戸先輩に聞いてみた。

 結構目が据わってて恐いんだけど。

「んーっと、ここには家と親戚の家があるから、全部で三家あるかな?」

 ふむ、広いとは思っていたが、そう言うからくりか。

 どうやら立地的に、三方面に家があり、この桜並木はその中心になるそうな。

「って事は他の家からも丸見え?」

 酒盛りを許す家系ってのもどうかと思うが。

「いいのよ、家は造り酒屋だから」

 そんな理論は、少年マンガでは通用しないが。

「瀬戸ん家はこの辺の名家だからな。村山が羨ましいぞ」

 兄北田の発言まで村山の存在を忘れていたのは内緒だ。

 ってか酔いつぶれたのか、瀬戸先輩の後ろで寝てるし。

「それにしても熱燗君は強いね? まだいける?」

「寺尾さん? 名前間違えてますよ。そもそも女子高生が同級生にお酒を勧める構図に疑問はありませんか?」

「ん? 女子高生? あ! えっち!!」

 なんだ? なんだ??
 

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