ブルー・フィールド
 
 レースがラスト100mの中、電光掲示板のタイムは刻々と進んでいく。

「16分越えたわよ」

 部長が嬉しそうに言い、先輩達もソワソワしている。

 16分5秒くらいに1着がゴール。

「早く進みなさいよ! 早く!」

 飯島先輩は時計に文句を言っている。

 16分10秒辺りで2着がゴール。

 この辺りの選手は、後半でもタイムが落ちにくいタイプなんだろうな。

 もちろん、100mラップ毎にタイムは落ちるんだろうが、落ち幅が少ないというか。

 少し遅れて16分25秒辺りで3着がゴール。

「よし! カウントダウンだ!」

 兄北田が言いはじめたが、もちろんカウントダウンの大合唱など誰もしない。

 16分35秒まであと3秒で4着がゴール。

 その後はかなり離れているから、当然、残り2秒でゴールする訳がないが。

「やったよ! 35秒越えた!」

 あーちゃんが、多分、今日初めてのマネージャーらしい仕事をしている。

「ひろくん、やったね!」

 由美も明るい笑顔で、喜んでいる。

「浅野君は、ホント凄いわ」

 伊藤部長も、この時ばかりは負けず嫌いはしまっておくらしい。


 入賞と言っても5位だから、表彰式がある訳でもないし、記念品が贈られる訳でもない。

 ただ学校に得点2が加わるだけの事だが。

 それでも、羽鳥高校では何年振りかの得点。

「部長が言ってた通り、何年振りかの得点がボケボケカップルになりそうね」

 いやそれを言い出したのはあーちゃんだろ?

「う〜私は無理だよ〜」

 由美もプレッシャーなのは分かるが、そんな牛みたいに唸らなくてもいいのに。

「大丈夫。浅野君にできて由美にできない理由がないから」

 あーちゃんの言葉には根拠も遠慮も無いみたいですが。

「あーちゃんの言う通り、こうなったら、独り身のあーちゃんにボケボケカップルの底力を見せてやろう!」

『バッシーン!』

「うっさい! このエロオヤジ!」

 イッテー!  いつも言われてんだから、これくらいのお返しはしてもよかろうに。
 
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