ブルー・フィールド
「それじゃあ行ってくるね」
由美がレースへ向かおうとすると
「寺尾さん、頑張ってね」
「ファイトだ! 頑張れ!」
「由美ちゃん、負けるなー」
「気合いだ! 気合いだ! 気合いだーー!」
若干一名アニマル参加しているが、皆から激励が飛ぶ。
別に俺の時は激励が無かったなんて拗ねたりしない。
扱いが違うのは承知してるからさ。
「ほら、浅野君も」
妹北田は特にいじるつもりではないんだろう、普通に言ってくる。
「頑張れよ。力をだし……」
「寺尾ちゃん、入賞したら浅野君がご褒美にチューしてくれるって」
こら! 勝手に決めるな!
「バ、バカ〜! そんなのしないもん!」
いや、だから俺が言ったんじゃないって。
「ホントに浅野は無神経だな」
「そうよね。皆に聞こえるように言う? 普通」
「だいたい、寺尾に手を出したら犯罪だろ」
「ロリコンだからしょうがないんじゃない?」
「だいたいチューだけですまないでしょ」
「女心を分かってないわよね」
……陰口が段々エスカレートしてないか?
女子200mフリーの決勝。
由美は予選8位通過だから、コースも最後尾となる8コース。
予選で前をいった桜坂の選手は1コース。
すぐ隣じゃないのは、無意識の意識をしないで済むかな。
男子の決勝が終わり、女子選手が呼び込まれる。
入場口側が1コースだから、由美が一番最初に入場してくる。
「どう? 緊張してる?」
部長が隣にきて聞いてきた。
「遠目だからよく分かんないですけど、多分かなり緊張してるでしょ」
初めての決勝レースで、周りからの入賞への期待も高い。
緊張しないほうが無理だ。
「そうじゃなくて、浅野君が、よ」
俺?
「まあそりゃ多少は、緊張というか、興奮はしますけど」
「へえ。皆の前でチューする事を妄想して、興奮しちゃうんだ」
……ちょっとそのネタ、引っ張り過ぎだと思いますが。