ブルー・フィールド
 
 と、缶ビール片手になかなか飲みはしない村山が口を開いた。

「でも、僕も興味有るかな」

「村山は今更いいだろ?」

 今は違うにしろ、コクらなきゃならない立場ではないんだし。

「だって、皆はどう言ってるのかとか興味あるし」

 別に参考になるようなことも言ってない。

 別にヘタレ自慢する気も無いし、あんな告白シーン、今からでも修正したいくらいだ。

「でも、高橋君も知りたいよね?」

 と、話をふられた高橋も、コクンと頷く。

「あのなあ。別にドラマやアニメのような劇的な告白シーンとか、普通はやらないんだから。普段の会話の延長みたいなものだろ?」

 特に俺と由美の場合は、タイミングの問題だけだったし。

「でも、僕も、告白とか、したいし」

 なに?

「高橋は好きな相手いるのか?」

 別に高校一年生ともなれば、いても不思議ではないが、普段の会話にはその手の話しが出てこないから、そこまで思う相手がいないと思っていたんだが。

「エーー! 高橋君、好きな子いるの? 誰? 誰?」

 由美にまとわり付いていた集団が、一気に高橋の元へと移動し、俺と村山は弾き飛ばされた。

「なんだあ? 皆、その手の話がホント好きだなあ」

「ホントだね。でも、びっくりしちゃった」

「という事は、村山も聞いていないのか?」

 もし知っていたら、それはそれで俺だけ仲間外れみたいで寂しい。

「うん。高橋君とはほとんど水泳の話ししかしないから」

 水泳部としては正しいような気もするが、高校一年生同士の会話としては色気もそっけもないな。

「と言うか、俺と由美の話は家で母親にまで話すのにか?」

「そんな古い話を。浅野君にしては覚えてるんだね」

 だから、そんなにバカ扱いするなってーの。

 勉強以外はわりかし覚えてるんだから。
 
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