ブルー・フィールド
 
 高橋に群がる女子部員を他所に、質問攻めで疲れた由美の元へと移動。

「ご苦労さんだったな」

「あ、ひろくん。何で皆私に聞いてくるのかな?」

 それは俺に聞いても、ボケで返され、まともに答えないからだろう。

「しかし、皆、ああみえてやっぱり女子高生なんだよな」

 井戸端おばちゃんずとか言ってるのは、特に先輩に聞かれては大変な仕打ちを受ける。

「でも、なんか芸能レポーターに囲まれる女優さんみたいで楽しかったよ」

 そんなもんかねえ。

「で? 変な事は言ってないよな?」

 人工ボケの出来ない由美が、その場を盛り上げる為のネタをふるとは思えないが、天然ボケを発揮して要らん事まで言っている可能性もある。

「んっとね、ひろくんはやたらチューさせろって言ってくるってくらいかな」

 ああ、そう言えば……は?

「いや待て。やたらって2回しか言ってないぞ」

 昨日の今日で2回が多いとか言わない。

「そうだっけ? でもまだしないもん!」

 酒のせいか、昼間はあんなに恥ずかしがっていても、今は結構普通に話するんだな。

「でもね〜初めてのチューはひろくんにあげるからね」

 やっぱり相当酔ってるな。

「ああ。期待して待ってるわ」

 どうせ酔いが醒めたら「そんな事、言ってないもん!」とかって照れるんだろうが。

「それだけ?」

 ん? 何を追及する?

「チューを待ってるだけなの?」

 あかん、完全に酔っ払いだわ。

「ひろくんは私が……」

「はいはい、いつまでも大事にするから。安心しなさい」

 由美がシラフならこんな事恥ずかしくていえないが、酔ってるんだし、明日には忘れてるだろう。

「へえ。浅野君はそんなに寺尾さんを思ってるんだ」

 なに!

「三村先輩? もしかして盗み聞きってやつですか?」

「そうかあ。羨ましいな、そういう言葉を言ってくれる相手がいるって」

 ん? 俺をいじるより、何か物思いにふけっている?
 
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