ブルー・フィールド
「ところで、先輩と三村先輩は幼馴染みなんですよね」
普段なら聞かないが、何となくさっきの三村先輩の様子が気になり、ちょっと聞いてみる。
「ん、ああ。家が隣やんな。やで、自然とそうなるわな」
何も知らない井上先輩は、いつもと変わらない様子で答えてくれる。
「その間に、何も無かったんですか?」
「そらまあいろいろあったな」
そのいろいろを聞きたいんだが。自発的には言わないか。
「例えば? コクってフラれたとか?」
兄北田の様な場合なら、フラれてから仲が良くても分かる話だし。
「いや。俺らんは、そう言うの無理やんな」
「無理?」
意味が分からない。
「ん? ああわりい。ちょっとあれや。な」
と立ち上がり、移動してしまった。
理由は分からないままだから、何か消化不良なんだが、先輩相手だし、仕方ないか。
いつもの様に、大多数が酔い潰れ、平然としているのは部長、兄北田、三村先輩、鮎川、高橋と俺の6人になる。
瀬戸先輩やあーちゃん、朝倉先輩、井上先輩は潰れる寸前の酔っ払い。
自力では歩けないだろうな。
「仕方ない、そろそろお開きにしましょうか」
部長が言うと、兄北田が携帯を取り出す。
「もしもし。あ、すいません、終わりますんで、またお願いしていいですか」
いつもの如く、酒蔵の従業員さんに酔っ払いを運んでもらう事になる。
「浅野は、ちょっと残れよ」
ん?
「まだ飲み足りないんですか?」
「バカやろう。そうじゃなくて、ちょっと話があるんだ」
兄北田の表情は、いつものおちゃらけでも、怪し過ぎる営業スマイルでもない、水泳の時の様な真剣な眼差しだ。
「北田君、話しちゃうの?」
部長が何やら不安げな顔で尋ねている。
「まあ、こいつらには関係無いにしろ、一応、こうなったからには、説明だけはしておかないと」
一体何の事か分からないが、何やら真剣な話らしい空気なのは読める。
「じゃあお任せしていい? さすがに私達では、ね」
「はい。任せてください」
会話が終わると、部長も皆と一緒に、屋敷へと歩いていった。