ブルー・フィールド
 
「深刻な話ですか?」

 いつもの口調と違うから、単なる雑談ではないだろう。

「まあな。ただそんなに深刻に受け止めなくてもいいぞ」

 そう言いながらも、まだ本題に入りたくはなさそうだが。

「とりあえず、寺尾と上手くいって良かったな」

「はい、ありがとうございます」

 なんだ? 由美に関する事か?

「ホントなら、単純におめでとうで終わるとこだが。いろいろあってな」

 言い難いんだろう。言っている事が回りくどい。

「お前達が入ってきた時から、か。2人の雰囲気を見てて、いつかこうなった時に、と、俺達なりに、話し合っていたんだ。これだけは言っておこう、とな」

 兄北田はそこまで言うと、汗を掻いた缶ビールを口に運ぶ。

「浅野はまだ童貞だろ?」

『ブーッ!』

 思わずビールを吹き出すだろ!

「いきなりなんすか!」

と、兄北田の眼は、ふざけて聞いているんではないのだろう、真剣なままだ。

「まあ、そりゃまだしてないですから」

 まだ15歳だし、言うことに抵抗はあっても、それ自体が恥ずかしい訳じゃない。

「寺尾も多分、まだだろ。あの様子だし」

 当たり前。というか、じゃなかったら、日本海溝まで落ち込むぞ。

 しかしなあ、まだ、SASUKEでいう、スタートの池を飛び越えただけの状態なんだが、いきなり話がそこへいくのか?

「わざわざお前を残して話すのは、まあ去年、ちょっとあったからなんだがな」

「去年って、県予選の時に話してた事ですか?」

 バックをやる選手がいたとかいないとかの話だな。

「お? 浅野にしては、よく覚えていたな」

 だから。そのフリも使いすぎだから。
 
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