ブルー・フィールド
 
「ああ、瀬戸と村山か。あれもなあ。もともと付き合ってるんだし、別に構わないとは言ったんだが、瀬戸から、高校の間は我慢するってな。とは言え、見ていて我慢仕切れてないみたいだけどな」

 ごく普通に説明してくれたが、何も気にしてないんだよな?

「そうでしたか。瀬戸先輩は北田先輩に気を使ってるのかと思ってましたから」

と、兄北田の顔が怪訝そうな表情になる。

「何で瀬戸が俺に気を使うんだ?」

「いや、一応フラれた人の前で、あんまり見せ付けないようにしてるのかな、と」

 本人を目の前にしているから、気兼ねしてちょっとだけ小声になる。

「はあ? 誰が誰にフラれるんだ?」

 あれ? 何か間違いか?

「瀬戸先輩が北田先輩の告白を断ったんでしょ? 村山がいるから、って」

 それを聞いて、ますます眉間にシワが寄る兄北田。

「美樹か?」

 あ、妹北田も口止めされていたんだったのを、すっかり忘れてた。

「まったく。あの井戸端おばちゃん振りも何とかならんかね」

 そう言って呆れたため息を一つつく。

「しかも情報が間違ってるし」

 え?

「俺が好きだったのは、瀬戸のお姉さんだよ。今言ったろ。俺は年上のお姉さん派だって」

「瀬戸先輩ってお姉さんいるんですか?」

 見たことないが。

「ああ、瀬戸んちは二人姉妹だ。お姉さんは俺らの2歳上だな。今は就職して社宅に入ってる」

 何となく兄北田の表情が緩んでるか?

「フラれたっても、単に先輩に彼氏が居たって話を知っただけだよ。告白はしてない。まあ妹の瀬戸は俺の気持ちに気付いてて、慰めてくれたけどな」

 何だか妹とか先輩とか単語がややこしい話だ。

「ついでに聞いてもいいですか?」

 俺の問い掛けに、兄北田は軽く首を傾ける。

「井上先輩と三村先輩も、その件で?」

 兄北田の顔がまた険しくなる。

「ホントに要らん事ばっかり察しがいいんだな」

 いや、だからそれは褒め言葉なのか?
 
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