ブルー・フィールド
皆が弁当を取りに行く間、Tシャツを着込んでベンチに座る。
同じ様なベンチ組には、瀬戸先輩の愛妻弁当を待つ村山と、妹北田に弁当を運ばせている兄北田がいる。
「あれ? 浅野君は、お昼ご飯食べないの?」
事情を知らない村山が聞いてきた。
「昼メシ抜きで昼からの練習がもつわけないだろ」
東南アジアの神秘的なおじいちゃんじゃないんだから。
「じゃあどうして?」
「まさかいきなり弁当作らせてたりしないよな?」
村山は相変わらず鈍いが、兄北田は気付いたみたいだ。
「罰ゲームみたいなもんですから。今日だけですよ」
さすがに毎日は疲れるだろうし。
そもそも中身によってはちょっと考えてもらわなくてはならないから。
「ほう。今日だけ、ね。そんな貴重なもんなら、俺らもいただこうか」
「いや、いくら先輩でも、それは無理っす」
普通の弁当ならまだしも、カレーうどんサンドなぞ見せるのもヤバいぐらいだ。
そんな会話をしていると、弁当組がベンチに戻ってきた。
全員が弁当持参ではなく、約半分はコンビニまで買いに行く。
待てない程の時間でもないが、やはり空腹には勝てないし、何より早く終わらせ、ゆっくり休憩に入りたい為、弁当組は先に食べ始める。
俺の隣に由美が座り、間に弁当箱を置いた。
「へへへ。今日のは自信作なんだよ」
そう言いながら、弁当箱を開ける。
一見すれば、白く綺麗なパンに、タマゴの黄色や野菜の緑が映えていて食欲をそそる。
「あれ? 由美、もしかしてお弁当って浅野君の分も?」
由美の向こうからあーちゃんが驚いた声で話し掛けてきた。
「うん! だから今日のは力作なんだ」
「浅野君。一言言ってくれれば……」
あーちゃんの声音が何か、やっちまったね、あんた、ぐらいの勢いだが。
「料理は上手いんだよな?」
うどんサンドなるものはまだしも、味付けが悪くなければ、大概のモノは食べるのに支障無いはず。