ブルー・フィールド
 
「由美んちはねえ。いろいろチャレンジャーだから」

「なによ〜。お母さんは料理好きなんだよ?」

 つまり、2人の言葉を総合すれば、母寺尾はとんでも創作料理を造る方なんだな。

「まあ、発想がとんでも料理でも、味がしっかりしていれば良いと思うが」

「へえ。浅野君も意外とチャレンジャーだね」

 あーちゃんはそう言いながら、自分の弁当を食べ始めた。

「大丈夫だよ。美味しいから。ね」

 由美に笑顔で言われれば、何となく大丈夫だと思ってしまう、うん、親バカならね彼氏バカとでもいうのか。

「それじゃあいただくとするか」

 と、まずは定番のタマゴサンドからだな。

 俺の腕の流れをじっと見つめる由美の視線に気付いたが、理由は分かるから聞かない。

 とりあえずは一口頬張る。

「どう?」

 いくら料理に自信があっても、他人に食べさせる時には気になるんだろう。

「ん、普通に美味い。大丈夫だ」

 味王やら海原やらみたいなグルメじゃないから、この味を上手く表現するボキャブラリーはないが、普通に美味いと思う。

「よかった。いっぱいあるから、どんどん食べてね」

 ホッとした由美は、自分もサンドイッチを手に取り、食べ始めた。

 たわいもない話しをしながら、サンドイッチは次々と消化されていく。

 ツナサンドや野菜サンド、ハムカツサンドといった定番メニューは文句の付けようが無く美味い。

 ……そして最後に残ったのが、カレーうどんサンド……。

「どうしたの?」

 美味しく食べてもらえて嬉しいのだろう、こちらの心境も知らず、ごく普通に聞いてくる。

 ここは覚悟を決めるしかない!

 三日前とは違う緊張感が襲ってくる。

 まずは一つ手に取ってみるが、パンの間から見せるうどんのプニプニ感が違和感を醸し出す。

 カレー味だから、パンもほんのり黄色く染まっている。

 パン越しに手に伝わるうどんの感覚。未知との遭遇とでも言うのか。

 由美の視線がちょっと怪しくなってきたか?

「食べないの?」

 口調もちょっと沈み気味だ。

「いや、今からいくさ」

 食べ物同士の組み合わせだ。死ぬ事はあるまい。
 
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