ブルー・フィールド
 
 とりあえず一口。

 もぐもぐと感触を味わうと……うん、パン生地の柔らかさに、冷めて柔らかさの抜けたうどんの食感がとりあえずは良い気持ちではない。

 味付けとしてはまあまあ、か。そもそもうどんは味じゃなく腰だしな。

 カレー味のサンドイッチだと思えば味は問題ない。

 ただ、どうもうどんの感触が違和感を運んでくるなあ。

「どう? 美味しいでしょ」

 由美がニコニコして聞いてくるが、何と答えてよいのやら。

「まあ二者択一なら美味しいとなるが」

 こういう言い方でしか表現できない。

「でしょ? 美味しいよね」

 ……ポジティブ思考ですね。

 一切れを食べ終わるが、口の中にはカレーの風味が残るだけで、後味は悪くないか。

「ひろくんはいっぱい食べるから、いっぱい作ってきたんだよ」

「たしかに食べる量は人より多いが、練習の合間はそこまで食べないぞ」

 食べすぎで午後の練習どころではなくなる。

「あ、そっかぁ」

 テヘッという擬音が似合いそうな照れ方だな。

「残すのはあれだが、ある程度セーブしておかないとな」

「そうだね。プールの中で気持ち悪くなったら大変だもんね」

 ……思わず悲惨な状況を思い浮かべたぢゃないか。


 とりあえず昼メシは終わり、そのまま休憩に入る。

 夏らしく日差しがキツイが、中学時代から慣れたものだし、肌を焼くには良い感じだ。

「そういえば由美はあまり日焼けしてないな?」

 もともと白い方ではないが、日焼けもしていない。

「そうだね。なんでだろ?」

 いや、聞かれても困るし。

「ひろくんはいい感じに焼けてるね。剥けたりしないの?」

 ああ、SS行ってた由美にはわからないかな?

「5月から泳いでると、徐々に焼けていくから、剥けたりはしないもんだな」

 実際焼けて剥けたりすりなら、プールの中は部員の皮が浮きまくりで、泳ぐどころの話ではない。

「へえ、そうなんだ。けど、焼けてるのって健康的でいいよね」

「しかし、日焼けの境目を見るとマヌケだがな」

 と、雑談をしていると、プールサイドに人が入ってきた。
 
< 273 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop