ブルー・フィールド
部室に戻り、昼休憩に入る。
特に何をするでもなく、雑談したり、昼寝したりと各々好きなようにくつろぎ、午後の練習に備える。
『コンコン』
「おじゃましま〜す」
ノックへの返事も聞かず、ドアを開いて顔を出したのはあーちゃん。
「浅野君、ちょっと来て」
「俺?」
あーちゃんに個人面談される覚えはないが。
「何だ? 浮気か?」
朝倉先輩はあーちゃんに手を出す勇気があるらしい。
「違いますよー。浅野君となんて、頼まれたってイヤですから」
うん、俺もあーちゃんとは、頼まれたってイヤだ。
部室を出ると、あーちゃん以外にも妹北田もいる。
「なんだ?」
できるだけ休みたいから、ちゃっちゃと終わらせてもらいたい。
「あのさ、海に行く話なんだけど、今週の日曜にしない?」
「今週? 練習があるぞ」
由美と二人きりならまだしも、皆で行くなら、サボってまで行きたいとは思わないが。
「大丈夫、先生が教員の大会があるらしくて、練習休みなんだ」
「そんな話は初耳だぞ?」
と言っても、今に始まった事じゃないからいいが。
「じゃあ日曜で決まりだね」
会話の流れがおかしいのはスルーされているらしい。
「俺としては練習さえ問題なければいつでも良いが」
「ホント、浅野君はそういうとこだけは真面目だね」
そういうとこだけ、とか要らないから。
「そうそう、水泳以外は不真面目、ってか、水泳しか取り柄がないからね〜」
井戸端おばちゃんずに言われたくもない。
「とにかく、今度の日曜なんだな。馬場と木田にはあーちゃんが連絡してくれるのか?」
俺から連絡してもいいが、ぶっちゃけめんどくさい。
「うん、私から連絡しとくわよ。じゃあ朝の6時に駅前集合だから」
また6時かよ、辛いけど仕方ないか。海まで2時間くらいかかるし。