ブルー・フィールド
午後の練習時間になり、ぞろぞろとプールサイドに部員が集合する。
「浅野君は、午後は長距離練習だったね」
あーちゃんがストップウォッチを持って寄ってきた。
「というか、いまさらストップウォッチとか必要あるのか?」
どうせまともにタイムを教えてくれないんだしな。
「大丈夫。これからはちゃんと教えてあげるから」
それもどうだか。
「まあいい。とりあえず泳いでくるか」
どうせ何を言っても勝てないんだ。おとなしく従うしかない。
という事で、とりあえず1本泳いできたわけだが。
「ちょっと。何、17分32秒とか。この前より1分以上遅いじゃない」
あーちゃんがストップウォッチをこちらに向けながら怒っているが、逆光でタイムは見えない。
「かなり全力で泳いだつもりだがな。なんでだろ?」
「こっちが聞いてるの。ちゃんと泳ぎなさいよ」
と怒られたので、小休止を挟んで2本目に。
2本目以降はタイムは落ちて当たり前。
タイムを上げるより、いかにして落とさないか、がポイントなんだが。
「ちょっと〜。18分46秒。ひどいよ、これは」
あれ? たしかに疲労はあるが、そんなにひどいか?
「わかった! ストップウォッチが壊れてるんだな」
「そんな訳ないでしょ! まだ買ったばっかの新品なんだから」
「そうか。なら保証期間で無償修理だな」
……あーちゃんが呆れた視線をくれる。
「ちゃんとやらないと、居残りさせるわよ」
口調まで呆れている。ちょっと反省しよ。
「しかしなあ。一応ちゃんと泳いでるんだぞ」
言い訳ではなく、本気で泳いでいるんだが、何故かタイムに反映されていないみたいだが。
「もしかして、由美からのご褒美がないと遅くなる、とか?」
いや、何でそこでそんな無茶振りを思い付く?
つか、大会の時もご褒美とか無かったし。