ブルー・フィールド
 
 瀬戸家はさすがに地主だ名家だ酒蔵だというだけあって純和風の立派な玄関がある。

「あらあら、今年もよろしくね、修ちゃん」

 出迎えてくれたのは、多分瀬戸先輩のお母さんだろう。普通に着物着てるのって希少価値だな。

「こちらは?」

「あ、新入生の浅野です」

 寺尾を背負いながら軽く頭を下げる。

「あらあら、今年も活きの良い子が入ったのね」

とくすくす笑うけど……酒が飲めれば活きが良いというのも高校生としてどうよ?

「早く上がれ。さすがに女の子には冷え込むからな」

と勝手知ったる他人の家、とばかりに上がりこむ兄北田。

「いつものお部屋用意してあるから、女の子はそちらへ」

 通例行事っすか。

「女の子の寝室解かったからって、侵入するなよ」

 だから先輩、奥さんの視線が恐いから、そう言うのは辞めてください。


 一通り皆を運んで、男子用に用意された寝室で横になる。

 さすがに疲れた。

「にしても先輩は瀬戸先輩と仲良いんですね」

 まあ一年間同じ部活でやってりゃ仲も良くなるだろうけど。

「ん? うん、まあ、な」

 あれ? なんか触れちゃいけないところに触れたか?

「明日も学校だし、早く寝ろよ」

 兄北田はそう言って電気を消す。

 うむ、これは何かあるんだろうが、それを詮索するには酔いすぎだ。

 ちゃっちゃと寝よう。

 何かを忘れている気がするけど……。



『もえあがれもえあがれもえあがれ(ry』

 ん? 携帯のアラーム……じゃねーや、着信?

「なんだこんな時間に?」

「すんません、電話……」

 急いで携帯を取り出し、通話ボタンを押す。

『こら! こんな時間までどこ行ってんだ!』

 やべ、家に電話するの忘れてた……。
 

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