ブルー・フィールド
と、馬場がいつもと違う小声で喋りかけてきた。
「浅野、今『由美』って呼んでたけど、まさかお前ら?」
男がこの手の疑問形を使うのは癪に障るが、聞きたい事は解らんでもない。
「安心しろ。まだ手を繋ぐので精一杯だ」
「いきなりそんな答えか!」
順序だてて答えてもいいが、話すのはこっ恥ずかしいし。
「まだも何も、何にもありませんよーだ」
由美も恥ずかしいのか、顔を赤らめながら口を挟む。
「でも妄想はちゃんとしてたけどね」
あーちゃんは友達の純真さを軽く投げ飛ばすのに遠慮がないようだ。
「ちょっとー、そんなの知らないよー」
そんなの、の指す意味を聞いてみたいが、さすがにそこまでのS属性は無いので。
「まあ耳年増ってくらいで、実演はまだ先だろうな」
「ていうか、浅野にかかれば、一週間もたたずにエロ魔神になりそうだけどな」
「馬場相手なら三日もかからんだろうがな」
「そこは否定するとこでしょ?」
由美にはこのノリが分からないらしい。
うん、分かってもらうのも、それはそれで悲しいが。
列車が内海に近付くにつれ、次々に客が乗車してきて車内が混雑してくる。
さすがに通学ラッシュ程ではないが、何かゲームしながら、とはいかない。
「着いたらまずは海の家でスペースを確保だな」
「一応ガイドブック持ってきたから、その中から選びましょ」
さすがにあーちゃん、準備がいい。
「えっとね、一番人気のスイーツがあるのは……ここよ」
……選ぶ基準はスイーツか?
下調べをしながら、和気あいあいと談笑していると、車内放送が流れ到着を知らせてくれた。