ブルー・フィールド
 
 海へ着いたのが朝の8時過ぎだというのに、陽射しが強く、軽く汗ばむ。

 しかし、根っからの夏男の俺にはこれくらいがちょうど良い感じだ。

「さて、まずは海の家を確保、だが、あーちゃんの希望はどこなんだ?」

 何を基準に選んだかは別として、レディファーストではないが、女の子の希望は聞かなくてはなるまい。

「んとねー、あ、あそこ、あそこ」

 言うや否や、あーちゃんはスタスタと歩き出したが……

「荷物は馬場に任せればいいんだよな?」

「何言ってんだ。友達だろ?」

「お前と友達になるつもりなどさらさら無いが」

 友達選びは大事だし。

「そんなバカやってないで、早く行こうぜ」

 バカな木田にバカ扱いされるのは癪に障る……ん?

「木田も運べ!」

「あ? バレた」



 堤防沿いにしばらく歩くと、あーちゃん御用達の海の家が見えてきた。

「ところで由美に教えて欲しいんだが」

「何? 水着は着てきてないよ」

 ん、なら着替えを覗け……ちっがーう!

「替えの下着の心配まではしてない。ではなく! これはペンションと言われるものじゃないのか?」

 着いた建物は、よくある海の家のような、鉄パイプにベニヤをくっ付けた簡素なものや、もう少し凝ってはいるものの、木造で屋根と衝立程度の壁がある窓なしログハウス風でもない。

 平屋だが壁は白く塗られ、道路側は喫茶店かレストランなのであろうか、窓ガラス越しにいくつかのテーブルが見える。

 奥行きがあるから、多分、奥に休憩所があるんだろうが。

「でも、綺麗だしいいんじゃない?」

 由美はそう言うと、あーちゃんに着いて中に入って行く。

 妹北田や馬場、木田も何も疑問を持たないようで、はしゃぎながら中へ入っていった。

 まあ皆が良ければ、俺には特に断りは要らない……というのはちょい寂しいが。
 
< 284 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop