ブルー・フィールド
海へ着いたのが朝の8時過ぎだというのに、陽射しが強く、軽く汗ばむ。
しかし、根っからの夏男の俺にはこれくらいがちょうど良い感じだ。
「さて、まずは海の家を確保、だが、あーちゃんの希望はどこなんだ?」
何を基準に選んだかは別として、レディファーストではないが、女の子の希望は聞かなくてはなるまい。
「んとねー、あ、あそこ、あそこ」
言うや否や、あーちゃんはスタスタと歩き出したが……
「荷物は馬場に任せればいいんだよな?」
「何言ってんだ。友達だろ?」
「お前と友達になるつもりなどさらさら無いが」
友達選びは大事だし。
「そんなバカやってないで、早く行こうぜ」
バカな木田にバカ扱いされるのは癪に障る……ん?
「木田も運べ!」
「あ? バレた」
堤防沿いにしばらく歩くと、あーちゃん御用達の海の家が見えてきた。
「ところで由美に教えて欲しいんだが」
「何? 水着は着てきてないよ」
ん、なら着替えを覗け……ちっがーう!
「替えの下着の心配まではしてない。ではなく! これはペンションと言われるものじゃないのか?」
着いた建物は、よくある海の家のような、鉄パイプにベニヤをくっ付けた簡素なものや、もう少し凝ってはいるものの、木造で屋根と衝立程度の壁がある窓なしログハウス風でもない。
平屋だが壁は白く塗られ、道路側は喫茶店かレストランなのであろうか、窓ガラス越しにいくつかのテーブルが見える。
奥行きがあるから、多分、奥に休憩所があるんだろうが。
「でも、綺麗だしいいんじゃない?」
由美はそう言うと、あーちゃんに着いて中に入って行く。
妹北田や馬場、木田も何も疑問を持たないようで、はしゃぎながら中へ入っていった。
まあ皆が良ければ、俺には特に断りは要らない……というのはちょい寂しいが。