ブルー・フィールド
 
 最初は波打ち際、水深が膝下くらいまでの所でぶらつきながら、魚いないかな、酒の肴無いかな、と探したりしていたが。

 かなり向こうにブイが見える。

 あそこが遊泳範囲の目印なんだろうが、何mくらいあるんだろ。

「どうしたの?」

 普段から由美の濡れた髪とかよくみているが、環境効果か、海辺で見ると、ちょっと色香を感じる。

「いや、あそこまで泳ぐと辛いかな、と思いを巡らせてみたんだが」

 海で本気泳ぎとかあんまりしたくないのはある。

 回りには和気あいあいと水遊びをする家族連れや、浮き輪で浮かぶ彼女と寄り添う彼氏のほのぼのカップルがいるのに。

「ひろ君ならあそこまで行けそうだね」

 由美には周囲は関係ないんだろう、何となく視線に期待が込められている。

「んなら一泳ぎしてみるかな」

 別に彼女に良い所を見せたい、とかではない。

 そもそも単なる遠泳を格好良いと思うかどうか。

 単純に個人的興味で泳いでみたいかな、と、ゴーグルを装備し、戦闘態勢に入る。

「おいおい。途中で波に拐われて無人島に流れ着いたりするなよ」

「そんで地元の女の子に介抱されたりしてな」

 馬場と木田が変なフラグを立てようとしているが、この作者にそこまでの技量はないし。

「つか、木田は荷物番してるんじゃないのか? とっとと戻れよ」

「だって、暇じゃないかよ」

 荷物番なんてそんなもんだろ。

「暇だからじゃなくて、仲間外れみたいで寂しいねよね〜」

 そんな。妹北田が言っても可愛くないのに、木田が言ったら、大阪臨海アッパーをぶち込みたいような理由かよ。

「ま、いいや。軽く行ってくるわ」

 2回目の出発宣言をすると、何故か由美が悲しげな表情をしている。

「どうした?」

「もう……二度と会えない気が……するんです!」

「彼女が不吉なフラグを立てない!」
 
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