ブルー・フィールド
結局わさび入りおにぎりを上手く引き当てたのは馬場だった。
馬場だけにババを引く、なんともまあオヤジギャグ的ノリで食べてくれた。
「ちょっと、大丈夫? お茶でゆすいでいいから」
仕掛け人の責任からか、あーちゃんが馬場に紙コップに入った麦茶をすすめる。
あーちゃん狙いの馬場としては、転ばぬ先の杖、違うな、棚からボタン海老?
それぞれに漬物やら妹北田の作ってきた、とは言っていいのか、ゆで卵をほおばる。
と、窓にいくつかの水滴がつき始めた。
「やっぱり降り出したね」
誰ともなく呟く。
「んなら昼寝でもするか? ま、暇つぶしがあれば別だが」
俺の一言に木田と馬場が驚いた表情を見せる。
「何? お前らもうそんな関係なのか?」
馬場の言葉を聞き、一瞬戸惑った。
いや、男女が一緒に寝るなんてのは、深い関係になってからというのが、高校一年生の正常な判断だ。中には軽い気持ちのやつらもいるだろうが、とりあえずこの面子にはそれはいない。
「あ、そうか。いや、ほら、俺ら練習中は午前と午後の間、長いだろ。結構昼寝とかしてるんだわ」
言い訳じゃないから、手が汗ばんだり、声が上ずったりしない。
「なるほど。いや、てっきりそんなおいしいシチュ…」
「木田君、いい子だからそれ以上は言わない方が身のためよ」
木田の言葉を遮る妹北田。そのこめかみにはうっすらと神経・・・ではなく、青筋が浮かび上がっている。
「なんだ? 妹北田はそっち方面の話は嫌いなのか?」
いつもの井戸端おばちゃん振りからすると、下ネタもオールオーケーな感じだが。
「そりゃ、私だって女の子なんだから。男の子の前でそういう話は、ねえ」
え、と。つまり俺の前では平気ってことは、男としてみてないってことか。
「だって浅野君には由美ちゃんがいるから。気兼ねする必要ないし」
はいはい、せいぜい化けの皮が剥がれないように頑張ってください。