ブルー・フィールド
窓を叩くゲリラ豪雨の中、普段の学校での何気ない会話がここでも繰り広げられる。
面子がこの面子では当たり前ではあるが。
「でさ、そん時、中西が・・・」
馬場と木田はとにかく話題に事欠かない、あの井戸端おばちゃんずすら圧倒するほどの話題の振り幅だ。普段の俺との会話以上に話が出てくる、ってかウザイくらい。
「ねえねえ、木田君ってひろ君と同じ中学なんだよね?」
話題が途切れたホンの少しの間をついて、由美が口を開く。
「おいおい、俺の個人情報を聞き出すとかやめろよ」
普通の会話の流れから、そうなるんだろうが。
「そーそー。寺尾さん、浅野の中学時代の話、聞きたいでしょ」
なぜ木田は俺が制しているのに話をしようとしている?
「あー、私も聞いてみたいかも。弱み握れるかもしれないし」
あーちゃんまで。ってか、弱み握ってなくても、俺のことをさんざっぱら叩いてくれてますが。
「でしょ。あ、こいつの一番笑える話ってのはね。やっぱ大塚のことか?」
・・・やっぱりな。
木田とは2年、3年と同じクラスだった。当然、大塚をけしかけてくる面子に木田も入っていた。
「純子ちゃん、そういえば一緒のクラスだったんだ」
由美の表情が一瞬くもる、というか、寂しげになる。
あの喫茶店で仲直りしたとはいえ、それはそれ。恋愛関係になかったとはいえ、仲が良かったのは否定できない事実だし。
彼氏が他の女の子と仲良くしてた、という過去話など聞きたくもないだろう。
「木田よ。俺の話をするということは、お前の過去話を妹北田に話しても言い、ということだよな?」
俺は腕組みをしながら、引き攣った笑顔を木田に向ける。
「なるほど。そういわれれば俺の過去の爆弾、握られているんだよな」
当然、木田も引き攣った笑顔を返してくれる。
冷戦時代の米ソのように、お互いに爆弾を抱えての睨み合いだ。
「まーまー。お前ら、とりあずここは話し戻そうぜ」
馬場の一言で、とりあえず俺と木田は引き攣った笑顔のまま、がっちりと握手。
「なに漫画みたいなことやってんのよ。まあ二人の過去なんてどっちでもいいといえばどっちでもいいしね」
あーちゃんの口調が一番破壊力あるわ。