ブルー・フィールド
 
 しばらく雑談が続き、その間にゲリラ豪雨は過ぎ去っていった。

「そろそろ雨の心配はなさそうだが、まだ海へ行くか?」

 もちろん、海水浴目的で着たわけだが、海水浴場ということは、それなりにお土産屋さんなどもあるということで。

 男子連中はどうせ買っても木刀か竜の巻きついた剣のキーホルダーくらいだからいいが、女性陣はどうかな?

「あ! そういえば、ここのスイーツ、ほんっっっとに美味しいんだよ!」

 はいはい、食べ物のことになると、あーちゃんはいつもの倍以上の大声になるよね。

「え~、それって何があるの?」

 妹北田は知らないのか? 珍しい。食べ物のこと、特に甘いものなら何でも知っててそうだが。

「っていうか、美味しいって、食べたことあるんか?」

 高校一年生が片道2時間かけて食べに来てるとは思えないが。

「だって、ここに書いてるし」

 あーちゃんはそう言ってガイド誌を開いて見せてくれる。

 食べたこともないのに、雑誌の記事を鵜呑みにするって。しっかり者にみえて、やっぱり食べ物には甘いな、スイーツだけに・・・うわ、こんなネタ考えるなんて、疲れてんのかな。

「で。どんなデザートがあるんだ?」

 女子ならともかく、いくら流行の言い方、とはいえ、男子がスイーツとかいうのはどうも違和感、ってか、ぶっちゃけキモイ。

「んっとね、イチゴをのっけたガトーショコラが一押しなんだって。この辺、イチゴが取れるから」

 ガトーと聞けば、0083しか思い浮かばない俺には、イチゴがのってようが、ショコラがのってようが、ガトーがのるのはGP2号機としか思いつかん。

「ってか、イチゴの季節終わってるし。年中食べられるイチゴなら、ここでなくてもよかろ」

 と言っても誰も俺の言葉に耳を傾けるはずもない。

「私、イチゴ大好き!」

 そうか、由美はイチゴ大好きか、ならイチゴのガトーショコラ食べよう、うん。
 
< 296 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop