ブルー・フィールド
 
 ガトーショコラが無くなる頃、壁にかかった鳩時計に目をやる…鳩時計?

 時間は3時をちょっとすぎている、あれ? 鳩出てきてないよな?

「どうする? 帰る時間考えると、海に行くには微妙だぞ」

 男連中は多少遅くなってもいいが、女性陣はあまり遅くなってもいけないだろう。

 日没が遅いとはいえ、親が考える帰宅時間は日の長さよりも、時間が基準だし。

「そうね。あ、一度帰って、駅前で遊んでから解散にしましょう」

 あーちゃんにとっては海は遊びの一因子でしかなく、遊べるのならどこでもいいんだな。

「そうだね。あ、久しぶりにカラオケとか行きたいな」

「由美がいいんなら浅野君もいいよね」

 と聞いてくる妹北田も、あーちゃんの意見に賛成、ということか。

 当然、木田もOKだろうし、あーちゃん狙いの馬場も断ることはあるまい。

「まあ俺はいいぞ。十分泳いだし」

「俺も十分肌焼いたし。ほら、これ」

「男の肌なんか見たくないから。見せ付けんな」

 泳げない木田には肌を焼くくらいしか目的がなかったんだろうが、それを見せ付けられても、水泳部には、黒く焼けた肌なんて当たり前だし。

「じゃあ私たち着替えてくるから。覗いたら殺すからね」

 あーちゃんがこう言うのは俺はもう慣れているが、馬場はまだ慣れてないのか、ちょっと顔が引き攣っている。

「なあ、岬ちゃんってけっこうDV系?」

 女性3人が席を立ったあと、馬場が俺に聞いてきた。

「ん、たぶんあれは照れ隠しみたいなもんじゃないのか? 普段からあんな感じだが、由美とか他の女性部員とかと話してると、純情可憐乙女模様モードになることもあるし」

 でなければ、あーちゃんと仲良しな由美の人を見る目を疑わざるを得ない。

 つまり、その由美の彼氏になる俺の女の子を見る目もない、つまりはそう育てた俺の親の教育が悪く、さらにはその親を教育した祖父母や・・・つまりは人類が悪い。

 おお、全くもって世間が悪いとのたまう、半グレ的な思考回路じゃないか。
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