ブルー・フィールド
帰りの電車の中、行きでの勢いはどこへやら、みんなグダっとしている。
仕方ないか、水の中での活動というのはかなり体力を使う。
中学時代から水泳をしている俺だって、この疲れには慣れておらず、冬期の陸トレから夏期の水泳に移った直後は、結構寝るのが早いし熟睡する。
帰路につく時間が早かったお陰もあるのか、電車内はまだまだ空席が目立ち、俺たち6人は席に座ることができた。
特に狙ったわけではないが、帰りは俺と由美が2人掛けに座り、残りが4人掛けに座っている。
「ねえねえ」
由美が俺の耳元に口を近づけてきた。海からの帰路だというのに、シャンプーの良い匂いがする。女の子はどんな時でもおしゃれに気を使うものだな。
「あーちゃんと馬場君って、もしかして付き合ったりしちゃうかな?」
ほう。由美がそこに目を付けるとは。何にも考えず、ただ甘いもの食べてきただけかと思ったが。
「どうなんだろうな。馬場はああ見えても・・・」
と、言おうと思ったが、普段、周りからはどう見えるんだろう?
「ん? どうしたの?」
俺のふとした疑問は言葉にしてないから、当然由美にはわからない。
「いや、由美から見て、馬場ってどんな感じなんだ?」
「どうなんだろ? 多分、女の子の中ではそれなりに人気がある方かな? ほら、馬場君って結構みんなと話するし。クラスでも中心人物的な?」
なんで語尾が疑問系なのかは分からないが、そう言われてみればそうか。
俺からすると騒がしいウザイ部分はあるが、見方を変えれば、お祭り男というか、華があるというか。なんやかんやと人が寄ってくる。
しかし、それだけうるさい馬場と、同じくうるさいあーちゃんが付き合い出したら、うるささは何乗になるんだ?
「でもいいよね。こうやって仲良く遊びに良く仲間からカップルができるのって」
由美にはそういった疑問もないのだろう、ウキウキ気分で話している。
「というか、そもそも馬場は仲間内に入れて良いのか」
「え~、こうやって一緒に海に来てるじゃない」
由美の中では一度遊びに出かければそれで仲良しグループが出来上がる、らしい。
「そうだな。それで少しでもあーちゃんがしおらしくなってくれれば、俺も助かるし」
女の子が女性を意識すれば、多少は頭叩かれることも少なくなるだろう。
絶対的に無くなる事はないだろうが。あーちゃんだし。