ブルー・フィールド
 
「そうなのか?」

 そりゃ、俺は忘れていたとは言え、中学時代の知り合いではあるが、それだけで呼び捨てされても構わないと?

「だって、浅野君だもん。へんにさん付けされると、変じゃない?」

 だって、の意味が不明なんだが。

「とりあえず、嫌ではないんだな?」

「うん! って言うより、その方が浅野君らしくていいよ」

 寺尾の中の俺らしさ、とは一体なんなんだか。


 そんな会話の中でも、バスは順調に学校へと。

 途中、寺尾はさすがに疲れたのか寝不足か、すやすやと寝息を立てはじめた。

 ここで寝言で俺の名前でも言ってくれれば、展開としては面白いんだが、生憎この作者はそこまで甘くないらしい。



「はーい。皆起きろー。学校に着くぞー」

 やたら語尾を伸ばしながら、先生がマイクで叫ぶ。五月蝿い。

「ん? あれ? 寝ちゃってた?」

 寺尾も目を覚まし、他の座席でも次々に覚醒したようで、あくびやら伸びをする仕種が見える。

「浅野君は起きてたの?」

「ああ。寺尾の寝顔をしっかり観察させてもらった。写メまで撮ってな」

「うそー! ちょっと、止めてよー」

 あまり大声で叫んじゃいけません。迷惑ですよ。

「写メは冗談だが、寝顔は可愛かったぞ」

 別にコクるとかの意味合いではなく、軽く言ったんだが。

「寝顔だけ? 可愛いの?」

 予想外の反応だ。ちょっと困る。

「いや、それ以上はちょっと……」

 こんなバスの中で何も言える訳がないじゃないか。

「ん〜まあいっかあ」

 なんか分からんが、とりあえずは引いてくれたみたいだが。

 いつも可愛いとか言ってやりたいが、さすがにここではなあ。
 
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