ブルー・フィールド
だらし無いなあ、とため息をつくと、朝倉先輩が話しを続ける。
「最初、特に一年生は結構やるからな。俺らもそうだったけど」
やはりブランクってのは大きいらしく、この半年以上まともな運動をしていない身体は、多少の柔軟体操ではダメなくらいに鈍っているらしい。
「浅野は平気なんだな?」
「そうですね、今のところは」
水泳自体はやっていなかったが、2月にあったマラソン大会、三年生は自由参加だったけど、参加して学年3位を取っておいたし。
いや、3位が微妙とか言わない。
そりゃ陸上部の、元部長や、長距離部門の元レギュラーには敵わないんだから。
「浅野君は色々と鈍いから大丈夫なんだよね」
あーちゃん、ちゃんと上の文章読んだかな? ってか、色々ってなんだよ!
一応敏感な思春期真っ只中の高校一年生なんだが?
今季の初日という事もあり、先輩達や俺や村山達経験者は、軽く自分のペースで泳いで、身体を水に慣らし始める。
だが初心者の高橋&西岡は1コースに呼ばれ、藤木先生直々に指導を受けている。
「先生はあれでも元国体選手だからな。教え方もしっかりしてるし、大丈夫だろ」
元って何年前だろ? と思ったが聞かない方がいいだろう。
「浅野はフリー以外はどんなもんなんだ?」
「まあ普通にブレストくらいですか。つってもブレストは一般生徒並ですよ」
元々水泳の素質があったわけでもなく、単に部活でやっているから一般生徒より速く泳げるだけだ。
練習を積んでいない他の種目は大して泳げるわけでもない。
「そうか。じゃあメドレーはバッタやってくれ、な!」
「は?」
兄北田は俺の言葉を理解していないのか?
「フリーは村山を仕込んで、高橋にはブレストやらせようか」
ちょっと? 俺の疑問はスルーですか?
「安心しろ。夏休みまでには泳げるようにしてやるから」
決定項なんですね……。