ブルー・フィールド
 
 学校に着き、急いで部室へ行く……が時既に遅し。

 部室の前には貼紙が一枚。

『寝坊した浅野へ。体育教官室まで来い』

 いや、寝坊したんじゃなくて忘れてただけなんだけどね。

 あ、余計タチ悪いか。


 体育教官室……お化け屋敷よりも怖い。

 藤木先生も怖いが、もっと怖い先生がいる所でもある。

 天然なのか人工なのか、パンチパーマに顔つきも完全にヤンキー丸出しのバスケ部顧問、西尾(いつも赤いジャージ着てるが仮面は付けてない)

 普段はニコニコ愛想の良いとっつき易い印象ながら、怒らせると手がつけられない野球部顧問の吉田。

 本来なら1年生の体育を担当している西尾しか知らないんだが。

 部室の鍵は体育教官室にあり、それを取りに行くのは一年生の役目。

 自然と吉田とも顔見知りになる。

 特に水泳部の場合、プールの入口の手前、校庭の南端は野球部のベンチサイドがあり、挨拶どころか、日常的に会話もする。

 恐る恐る体育教官室へ近付き、上半分がガラスになっている入口から、こそっと中を覗き込む。

 体育教師4人(既出3人以外にも天野という、こちらは普通の体育教師がいる)の姿が見える。

 今ならみんな機嫌が良いのか?

 お茶を飲みながら談笑して、あ、煎餅食ってる。

 海苔巻き煎餅か、あれ、好きなんだよね。

 って言ってる場合じゃなくて。

「失礼します」

 さすがに堂々と入るのも気が引けるので、こそっと入ってみた。

「浅野! 何やってたの!」

 うっわー、やっぱ怒ってるよ。

「みんな早く来てミーティングやってたって言うのに!」

「すいません……」

 高橋ばりに小声になるが、しまった!

「こ・え・が・ち・い・さ・い!」

 藤木先生の右手が俺の下あごを掴んでます。

 マジ痛いんすけど。

「まったく。連絡事項は寺尾から聞いときなさい」

 うう、謝罪の為だけにここへ呼ばれたんですね。
 
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