ブルー・フィールド
 
 教室に入ると先ずは寺尾の元へ。

「おはようございます……」

 そーっと話し掛けると

「それだけ?」

と、まるでマンガのヒロインばりに、頬を膨らませている。やはり相当怒っているな。

「今朝は大変申し訳ありませんでした」

 しっかりとした口調で、ペこりと頭を下げる。

「浅野君。由美だって眠い中、早起きして来たんだからかね」

 あーちゃんが隣から口を挟む。

 言われなくても分かっているが、そこに反論するのは筋違いだろう。

「本当にごめんなさい」

 クラスの中で謝罪し続けるのも恥ずかしいが、仕方ない。

 魔王二人の怒りを買うよりは、一時の恥を選ぶさ。

「まったく今日だけだからね」

 お? さすがに誠意が伝わった?

「由美、ダメよ。甘やかしたら」

 あーちゃん? 本人が良いって言ってるのに、ダメ出しですか?

「でも、じゃあどうすればいいの?」

 寺尾さん、そこであーちゃんに聞くと、俺にかなり嫌な条件が出される、と気付いて下さい。

「まあ遅刻も初回だし、由美と私にジュース1本ずつで許してあげましょ」

「ちょっと待て! なんであーちゃんまで?」

「だって、私と由美は一心同体だもんね」

 そんな屁理屈通るか?

「けど、浅野君が悪いんだからしょうがないんじゃない?」

 寺尾が笑いながらそう言うが……。

 笑った時の眼鏡越しの瞳がまた綺麗なんだよなあ。

「分かりました。お二人にドリンクをプレゼントさせてもらいます」

 あの瞳を見るとついついなんでも言う事を聞いてしまう。

「ところでミーティングの内容……」

『キーンコーンカーンコーン』

 やっと本題に入ろうかとしたら、もう予鈴が鳴ってしまった。

「まあいいや、じゃあ後で、またな」

「うん。お昼にね」

 ん? 昼休みって、なんでそんな後で?

 まあいっか。休み時間は何かと慌ただしいしから。
 
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