ブルー・フィールド
 
 うちの学校には、残念ながらなのかそれが普通なのか、きらびやかでコース料理を嗜むような高級レストランや、美少女転校生が一人で食事をしているところに、イケメン同級生がトレーを持って「ここ、空いてる?」と近づく様な、広くて綺麗な食堂などはない。

 って前フリ長いな。

 所詮は県立高校だし、そんな高望みな妄想もしないけど。

 けどさ、購買がプレハブってどうよ?

 しかも飲み物はオール自販機で、しかもしかも定価売り。

 貧乏学生には10円でも安い方がいいのに。

「それで、何で村山まで来るんだ?」

 寺尾は当たり前、あーちゃんは仕方ない、けどなんで村山?

「え? だって……」

「いいじゃん! 男が細かい事気にしないの!」

 いや、まあ気にしないのはいいけどさ。村山の分まで出す気は無いし。

「ね、浅野君はどうするの?」

 寺尾はA社かS社かで迷っている。

「俺は、やっぱS社かな。A社は朝に飲む物らしいし」

 と、時事ネタは直ぐに廃れるから言いたくないんだが。

「何の事かよくわかんないけど、じゃあ私も」

 寺尾もS社のお茶にするらしい。

「なんかさ、浅野君と寺尾さんってそういうとこは仲良いんだね」

 村山君? 何余計な事言っているのかな?

「じ、じゃあ私、こっちにするね」

 ほら、寺尾が変に意識し始めただろうが。

「まあいいけどさ。村山には後で地獄を見てもらうか」

「え? 僕……何かした?」

 分かって無いのが一番の罪なんだがな。


 教室に戻り、俺が自分の席に座ると

「こっちで食べるね」

と寺尾とあーちゃんが弁当をぶら下げてやってきた。

 ミーティングの話もあるし、そうなるんだろう。

「あ、タマゴ焼き美味しそ」

 あーちゃんが目で一切れ欲しいと訴えてくる。

 ここはやっぱり、お約束だろ。

「どうぞ」

と言いながら弁当箱を差し出す……先は寺尾の前。

「え? え?」

 ネタについてこれない寺尾は困惑し、キョロキョロしてるし。

 ネタ振りする相手が悪かったな。
 
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