ブルー・フィールド
 
 午後の授業を終え、部活へと入る。

 部室に入ると高橋が先に来ていた。

「よ!」

「おつかれ……」

 高橋なりに慣れてはいるんだろうけど、相変わらず声は小さい。

 高橋はブレストを教え込んでもらっているものの、まだ100m完泳が精一杯。

 大会に出られるレベルには達していない。

 本人もそれは気付いているし、大会出場とかはどっちでもいいって感じだ。

 女子の方も、西岡はまだ専門を決めかねている様で、いろいろと試しているっぽい。

 当然、県予選にはエントリーしないみたいだ。


 高橋、村山と3人で、着替えを終えてプールサイドに上がる。

 梅雨入り宣言はまだだが、梅雨入りしたかの様に、今にも降り出しそうなどんよりした暗雲が立ち込めている。

「今日も降るかな」

「降りそうだね」

「いや村山には聞いてないから。独り言」

「……ぐすん」

 ぐすんって言葉で言うな。

 しばらくして全員集合した。

「浅野は、今日から大会まで800とバッタでいくからな」

 そう言う兄北田のスポーツマンスマイルが、いつもより怪しく見える。

「バッタはまだ分かるんですけど、何でフリーの800なんですか?」

「ん? だって村山は200が限界だろ」

「でもそれなら先輩が100と800とか200と800とか、あとフリーとバッタとか」

「そんなの疲れるじゃないか」

 普通に言い切りますか。さすがだ。

「でも、それなら400でもいいでしょ?」

「バッタの100とフリーの400は初日に重なるからな。だから800にしただけだよ」

 そんな理由かよ。

「リタイアしなきゃいいからな。その為にも練習練習!」

 そう言い切られてしまえば逆らい続けれないのが体育会系の宿命、か。

「分かりましたよ、やります、やります」

 まあ泳ぐだけなら800mならいけるけどさ。

 これでも中学時代からの経験者だし、長距離練習で1000m以上泳がされた事もあるし。

 ただ、タイム計測なんかはしてないから、ただ泳げるだけだけどね。
 
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