ブルー・フィールド
 
 皆がダッシュやなんやと泳ぐ間、黙々と800m泳ぎ続ける。

 うちの学校に限らず、ほとんどの学校のプールは25mプール。

 そこで800mを泳ぐ為には16往復する訳だが。

 800mを休憩無しで泳ぐんだから、体力的にしんどいのは当たり前。

 だがそれ以上に、途中からどこまで泳いだか分からなくなり、精神的にもしんどい。

 50mを16回なら都度何回目って教えてもらえるんだけど、16往復中、当然の事ながらプールサイドのマネージャーと会話は出来ないし。

 ラスト1往復になったら合図してくれるんだけど、それまでが全然わかんない。

 自分で数えられるのは6往復ぐらいまでで、10往復目とかは頭の中では他事考えてたり。

 今夜のテレビは何があったけ、とか、今日はジャンプの発売日だ、とか。

 なんとか800m泳ぎ切ると、普段はマネージャーらしさのかけらも無いあーちゃんが

「浅野君、12分って遅すぎるよ」

とストップウォッチを片手に言ってきた。

「そうなん? つか800mってどんなタイムが普通なんだ?」

「ん〜わかんないけど、100mが1分3秒ペースなら、単純に8分24秒?」

「無理言うな!」

 それが出来れば、ボルトはマラソンを1時間ちょっとで走り切るぞ。

 高校生の記録が8分くらいだから、俺のように長距離初心者なら9分台後半だろう。

 としてもまだ3分近く縮めないといけないのか。大変だな。


 800mを2本泳いだ辺りで、皆は個人練習を終わって、リレー練習に移る所。

「浅野、遅い。お前を待ってたんだぞ」

 兄北田の鬼のような言葉……つまり俺には休憩時間は無いのか?

「浅野君、頑張りなよ〜」

 あーちゃんや妹北田は他人事だ、頑張ってと言うだけならタダだしね。

 疲れた身体を引き摺りながらコースに向かう。

「今日からは、リレーはメドレーの練習だけでいくからな」

 うっわ。キツイ。

 フリーリレーも混ぜてくれた方が楽なのに。

「楽させない為に、って先生からの指示だ。諦めろ」

 そりゃ楽な練習じゃ意味は無いだろうけど、そこまで厳しくしなくても。

 大会までもつかあ?
 
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