ブルー・フィールド
 
 リレー練習はたしかにキツイが、他のメンバーが泳いでいる間、休めるのがありがたい。

「あれ? けど今回のメドレーは北田先輩が出てくれるんですよね?」

「大会ではな。練習は別だろ。それにどのみち個人では出るんだから、やらなきゃいけないだろ」

 そりゃそうだけども。


 リレー練習を終わり、次はタイムアタックに入る。

 一応これでも中学時代の経験者だから、バッタで100m泳ぐのは普通だが、タイムはよくない。

 たしか1分15か20秒くらいだったか。

 記憶も定かじゃないくらい。

「じゃあいくよ。位置について、よーい、ハイ!」

 大畠先輩の掛け声とともに飛び込む。

 バッタは最初に潜水でタイムを稼ぐ。

 バッタのキックがドルフィンキックで、フリーのキックがバタ足というのは、何か違和感があるが気にしない。

 飛び込みの勢いが緩んだ辺りで水面へ上昇。

 この間約10〜15m。

 15m以上の潜水はダメらしい、ってかダメ、失格。

 飛び込みだけで7〜8mは普通に進むから、キックで進むのは実際には5m程度か。

 バッタとはバタフライの略なんだが、略すと違う生き物になるのも、違和感といえば違和感だ。

 正確な由来は知らないが、多分手の掻き方が蝶の様だというんだろうが、どう見ても蝶には見えない。

 ホラー映画のゾンビとか、そんな感じじゃね?

 と考えながらも100mを泳ぎ、タイムを聞く。

「遅いよ、1分20秒。飯島ちゃんと同じじゃない」

 そりゃ男女の差はあれ、1年間経験してれば、多少は、ね。

「年増が何か?」

 う? 飯島先輩、隣に居たんですか?

「そっかぁ、浅野君は私をそう言う眼で見てたのね」

 視線が痛い……っていうか、この部の女子は皆恐い。

「ま、大会までに15秒切ればいいから」

 兄北田の容赦ない指令が出るし。

 よくよく考えると、村山や高橋はこんな事言われないよな?

「そりゃあいつらに言ったらプレッシャーで凹んじまうしな」

「俺は?」

「お前は鈍感で図太いから大丈夫だろ」

 ひどい言われようだ……泣いてもいいくらいだよ。
 
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